しなな泰之 『魔法少女を忘れない』 （スーパーダッシュ文庫）

魔法少女を忘れない (集英社スーパーダッシュ文庫)

半年前，母親がひとりの女の子を養子にすると連れてきた．その日から妹になったみらいは今は魔法の使えない元・魔法少女．普通とは違う社会を生きてきた少女との生活は，友人たちの助けを得ながら上手くいっているように見えた．
この世界での魔法少女は兵器として生み出され，近年までずっと秘匿されてきた特殊な存在として描かれる．「魔法少女」という名詞を使う必要は皆無だし，兵器が少女である必然性も特に語られない，『最終兵器彼女』のちせのような存在．ってことで，春夏秋冬のイベントにその特殊性を絡めて切なさやらなんやらを全面に押し出す話の作り方．作為的っつーかベタっつーか，鼻につくと感じるひとも多そうではあるけど，描くべき情報，隠すべき情報*1の選り分けは上手かったと思う．アホの子みらいの可愛い部分は存分に好きに描き，悲惨な部分は描かないことで想像力をくすぐられる．想像力ってよりは過去読んできた王道ものの記憶かも分からんが．主人公のニブチンが度を超えてて幾度となくイラッとさせられるのが玉に瑕だなあ*2．しかしまあ佐藤ケイ『LAST KISS』や新井輝『さよなら、いもうと。』のような雰囲気が好きなら，という感じで良かったと思います．

*1:兵器として具体的に何をしてきたのか・されてきたのかははっきりとは描かれない etc.

*2:かなりでっかい瑕