小野不由美 『残穢』 (新潮社)

残穢

残穢

もしも無念の死が未来に影響を残すのだとしたら、それはいったいどれだけの期間なのだろう。無限なのだろうか、それとも有限なのだろうか。有限だとすれば、何年なのだろう。何十年──あるいは、何百年なのだろうか。

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2001年末.作家である私のもとに,読者から一通の手紙が届く.私は20年以上前からあとがきを使って奇妙な体験談を募集していたのだ.手紙の送り主である久保さんは,新しく引っ越したマンションの部屋から,不思議な音がすると訴える.私は久保さんの住む岡谷マンションについて調べはじめる.
非常に冷静な筆致で描かれる,確かな知識と技術に裏打ちされた骨太のホラー.すげー面白くて,すげー怖い.実話怪談風に進行するストーリーは,マンションの一室の過去を調べていくうちに,マンションや近隣の団地,はては土地そのものの過去にまで言及してゆく.調査は少しずつ時代をさかのぼり,日本人の生活・文化の変遷や,現代史の様相も呈する.賃貸住宅の一階で暮らすひとに特におすすめしたい.