萬屋直人 『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』 (電撃文庫)

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)

「喪失症」が蔓延し,静かに滅びゆく世界.名前を喪った「少年」と「少女」は世界の果てを目指して旅を続ける.
キノの旅」の血を色濃く引いた(と思う)ロード・ストーリー.ひとことで言って綺麗な話.旅先で出会う人々はことごとく善人であり,ちょっとしたロマンスや別れを経験しつつ,終わりの見えない旅が二人だけのセカイを演出する.世界の荒んだ一面を示唆するような描写もちょろっとあったけど,作中に具体的に現れることはない.これといって芯となるストーリーがあるわけではない.ただひたすらに綺麗な世界を見せられる.するりと読めるのはいいけどなんか素直には受け入れがたいのよなあ.『ほしのこえ』をはじめて見たときと同じムズムズイライラした違和感があったのよ.ここまで嘘臭い,作り物めいたセカイを用意しなければ男と女をくっつけることも出来ないのか,みたいな.何も考えずに読めば少年と少女の甘酸っぱい青春語り.それだけの話なんだけどさ.