和智正喜 『真っ黒焦げの凶暴なウサギ』 (メガミ文庫)

昔々,森に身体を弱らせた旅の老人がやってきました.森の動物たちは老人を助けようと協力して働きましたが,力が弱く特技もないウサギは何も役に立つことが出来ません.それでもなにか老人の力になりたいと思った勇気あるウサギは炎に身を投じ,自分の肉を食料として老人に与えようとしました.ところが.
正統派の変身ダークヒーローもの.もともとは漫画の原作として 5,6 年前に考えていたものを小説化したとのことで,イラストレーターに加えてクリーチャーデザイナーがついてるのが異色といえば異色.プロットは明快で,巨大な力を手に入れたいじめられっ子の少年が,少女との約束のため敵組織に立ち向かうというもの.他人を前にするとろくに会話も出来ず,同級生や教師からの暴力が日常となった少年が周囲の助けを受けながら力と自信を手に入れていく.胃がちりちりするような前半からやがてカタルシスへ至る話の展開は実にオトコノコチック.まるで良質な 90 分の特撮映画を見ているようですごく気持ちいい.
プロローグに使われるモチーフはこれだよな.手塚治虫の『ブッダ』が思い出に強く残っている説話だけど正しい由来は今回はじめて知りました.