『CHAOS;HEAD』 (ニトロプラス)

CHAOS;HEAD

CHAOS;HEAD

渋谷に住む準引きこもりの高校生西條拓巳.「三次元に興味はない」と言い切る典型的なキモオタの彼はフィギュアに囲まれネトゲに興じる無気力な毎日を送っていた.そんな折,渋谷の街では「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇殺人事件が発生していた.集団ダイブ,妊娠男,貼り付け,ヴァンパイ屋…….チャット相手に釣られて一枚のグロ画像を見せられた日から,拓巳は事件に巻き込まれ,その周囲は妄想と狂気に覆われることになる.
A ルートと AA ルートをクリア.やー,これは良かった.傑作じゃないでしょうか.妄想が現実になり現実が妄想になりその境界が曖昧になるという,骨格の部分は目新しいものではないのだけど,その構造はむちゃくちゃ緻密……というより偏執狂的に用心深い.幾重にも妄想と伏線を張り巡らせており,話の尻尾を掴んだかと思ったらするりと逃げられる,そんなことの繰り返し.最終盤に差し掛かるまで全容がぜんぜん掴めなかった.それ故にか序盤はかなりかったるいのだけど,我慢してでも読み進める価値はあると思う.少しでも手を抜いたら「中二病」で片付けられそうなシナリオを,綱渡りをするように細心の注意を払って組み上げていた.素直にすげぇ.
特筆すべきは拓巳を演じる吉野裕行の「よく分かっている」役作り.他人を前にするとコミュニケーションも取れずなにかというと自分に甘い,ただでさえ強烈な拓巳の存在感を,その熱演でもって何倍にも増し,シナリオに恐ろしいほど説得力を与えていた.これまたすげぇとしか.久しぶりに声優の凄さを実感した気がする.
飯田譲治がギャルゲー作ったらこんな感じとの評が決め手になって買ったのだけどたしかに『NIGHT HEAD』や『世にも奇妙な物語』のような不条理な雰囲気も強かったかな.シナリオは『鏡原れぼりゅーしょん』の林直孝.小説のほうは評判あまり芳しくないようだけどこちらは凄かった.エロゲではない(15 歳以上推奨)し来月には Xbox360 に移植されるようだし騙されたと思って読んでみるといいですよ,と.