木村航 『ミラクルチロル44キロ Bパート・ミラクルフレーバー』 (メガミ文庫)

その名前を広める。人から人へ、言葉から言葉へ。それってウソくさくなっちゃうけど、でもそれはそれでオッケー。
わたしたちは言葉を使うからこそ「わたし」じゃなく「わたしたち」になった。
言葉はウソだ。言葉にできないことなんかいくらでもある。そんなことよく知ってる。
わたしたちはウソを呼吸して生きてゆく。そしてそのウソとウソとウソとウソの中から、本当のことを見つけ出そうとするのだ。

ミラクルチロル44キロ―Bパート・ミラクルフレーバー (メガミ文庫) - はてなキーワード

死んでしまった恋人・佳名理を生き返らせるために悪魔と契約をした大学生・田丸.そんな田丸に恋してしまった女子中学生のつぼみは小学生の小太郎とともに田丸への協力を続ける.チロルチョコと引き替えに街の人たちから少しずついのちの時間をもらう「いのちの募金」.すべてのチロルチョコがなくなったとき,分けてもらった時間だけ佳名理が生き返るというのだが.
A パートから続く後編.チロルだの悪魔だので飾ってはいるものの,その実は家族だの恋人だの死人だのが絡んだ下世話な青春話.七面倒ばかりの生活や人間関係はそれこそお腹がぎゅろぎゅろ鳴るようなストレスの連続,いいことなんか滅多にないのだけれど,ほんの少しでもほぐれていくと嬉しいよね,という.本当の考えの読み取りにくい冷めた一人称,スタイリッシュとは言えない(意図した)ぐだぐだストーリーも贅肉を削ったテキスト運びのうまさで読ませられた.なんとなく騙されてる様な気がしないでもないけど,イタタな青春,面白かったです.