うえお久光 『紫色のクオリア』 (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

毬井ゆかりはかわいい.毬井ゆかりは紫色の瞳を持っている.毬井ゆかりはニンゲンがロボットに見えるという.その話が真実かどうか,他人に確かめるすべはない.
友人の少女を救うための可能性を最短距離で探す少女の話.無数の平行世界を渡ることのできる,万能に近い力を手にしながら,まったく思うようにいかず何度もくじけ思い詰めていくマナブは胸に迫るものがある.SF のガジェットを壮大に展開し収束する物語の結論は,それでいて等身大のものに収まる.このあたりはわりと善し悪しな気もするのだけど,最短距離を進むつもりが大きな遠回りになっていた,という青春ものの王道を下敷きにした物語は良かったと思う.ところで「毬井についてのエトセトラ」のアレはロボットだけにロボトミーというシャレだよね? ともあれ.評判の良さにも深く納得したのでした.