森田季節 『ともだち同盟』 (角川書店)

ともだち同盟

ともだち同盟

こんなにいやらしく人を恫喝できる人間がいるだろうか。まるでイチゴのクレープみたいだと弥刀は思った。薄い甘いクレープの生地の奥にはけばけばしいイチゴの原色がひかえている。甘い皮だけでいい。すっぱいフルーツはいらない。

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女の子のような外見でともだちのいない弥刀.魔女を自称するクールな千里.いつも千里と手をつないでいる朝日.三人はともだち同盟の誓いによって"ともだち"になった.けっしてお互いの秘密をばらさないこと,けっしてウソをつかないこと.同盟は,朝日が弥刀に告白をしたことでゆらぎが生じ,千里が駅のホームから転落死したことで決定的な転換を迎える.
初夏を迎えた神戸での,男の子と女の子と女の子の話.自称魔女の呪いによって,どことも分からない場所で三人きりになった"ともだち"の不安な関係を描く,「摩訶不思議でビターダークな青春ミステリー」.斜に構えた三人が直面する,断絶とも繋がりとも取れるもやもやを,静かな風景とともに書き綴っていく.非常に読ませられるのだけど,感情の動きそのものには共感しにくい部分が多かった気がする.昨日の『七胴落とし』とテーマは似ていると思うのだけど,関係がより閉じている,からかね? これもまたよく分からない.あとみんな言ってるので恐縮だけど,シライシユウコの装画がすごくいいなあと.