大間九郎 『ファンダ・メンダ・マウス』 (このライトノベルがすごい!文庫)

ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)

ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)

手を握れガキんちょ、この先負け犬として糞みたいに生きて行くか、糞塗れで肥溜から抜け出すかの分岐点だ。
手を握れガキんちょ。おれからは握れない、握っても意味がない、自分で選べ、選んで握れ!
「頭からおしっこカケてやります」
美月さんは笑顔でおれの手を握る。
「それはやめた方がいいよ、喜んじゃうから」

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第 1 回「このライトノベルがすごい!」大賞・栗山千明賞受賞のデビュー作.システムに守られた世界一安全な港,横浜.マウスは高校を卒業後,最新鋭の警備システム・ヴォルグ 2000(くそったれ)の備えられた倉庫で働いていた.ある日,マウスのもとに,高校時代の恩師の娘から助けを求める電話が鳴り響く.
横浜を舞台に,恋やら金やら色んな利権やらが絡みつつの青春小説.海猫沢めろん成田良悟を足して二で割った感じというと伝わりやすそうな気がする.暗い過去と前向きにあがく現在というストーリーラインと,露骨なテキストに紛れ込む,恥ずかしいくらいまっすぐな言葉,とか.さらに加えてカスカスのストーリーとノリノリのテキスト,露悪趣味漂うキャラクターたち,まとまりの欠けたガジェット.ジャンク感は凄まじい.ついでにストーリーが完走する前に息切れした感もあり,作中で言う「くそったれ」が非常によく似合う作品であると思う.
それにしても,栗山千明が候補作を本当にいくつか読んだうえで,これを選んだのだとしたら,千明様のセンス良すぎだと思うマジで.良かったです.
『このライトノベルがすごい!』大賞 受賞作特集