ドン・ウィンズロウ/東江一紀 『フランキー・マシーンの冬』 (角川文庫)

ふだんなら、この窓から太平洋が望める。
国境の向こう、ティファナの山並も……。
きょうは、通りの向かい側すらろくに見えない。
すべては霧と雨のせいだ。
天がフランキー・マシーンのために泣いている。

Amazon CAPTCHA

かつてフランキー・マシーンと呼ばれ恐れられた元殺し屋フランク・マシアーノ.62 歳となった彼はマフィア稼業から足を濯い,サンディエゴで規則正しい生活をおくりながら,釣り餌屋をはじめとした五つのビジネスを営む精力的で静かな日々を過ごしていた.ロサンゼルス組の残党の息子が訪ねてきたある冬の日から,フランクは命を狙われることになる.
老境を迎えた“凄腕”フランキー・マシーンを狙うのは何者なのか.漁師の息子として生まれ,マフィアとして身を立て,足を濯い今に至るフランクの半生を振り返りながらの逃亡劇は,意外な陰謀へと発展していく.年取ってなお力強いフランクと,そこに至るまでに出会い,関係が変わり,もしくは死んでいった多くのマフィア,チンピラ,娼婦,成り上がり…….マフィアの世界から描くアメリカ,ヴェガス,サンディエゴの変化も興味深い.伏線をきれいに回収しながら向かうラストと,あまりにあっけない幕切れに滂沱せよ.良かったです.