森橋ビンゴ 『東雲侑子は全ての小説をあいしつづける』 (ファミ通文庫)

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)

東雲侑子は全ての小説をあいしつづける (ファミ通文庫)

俺だって、似たようなものだった。東雲の言葉、仕草、ひとつひとつに一喜一憂して、舞い上がったり落ち込んだりして。
正直、恋愛小説というものを読む気持ちが、ずっと俺には理解できなかったのだけれど、副島の話を聞きながら、ようやくその意味が分かったような気がする。
過去を思い出して感慨に耽ったり、自分との違いに、どこか羨ましいと思ってみたり、そういう、今までの自分にはなかった感情が芽生えていくのを感じる。

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英太と東雲は三年生になった.やりたいことが見つからず,進学に意味を見出せない英太はどのような決断をするのか.
高校の三年間を描ききったシリーズ完結編.良かった.恋愛がどのようにひとを変えるかを,愚直に繰り返し繰り返し説きながら描いている.あとがきを読んでも,真摯にキャラクターに向かっていることがうかがえる.まあ,出版関係者や心の汚れたおとなには「ケッ」と思う向きもあるかもしれないけど(ケッ),一人称の語りからは良い意味での陳腐さがにじみ出ててすごく良いと思うの.
そのあとがきにもあるのだけど,いかにもライトノベル的なエキセントリックさや幼稚さを持った少女が,恋愛を通じて「普通」になっていく,という物語でもあるのな.たまたま今日こういう Tweet を見かけて,あーと思ったのだけど,つまりああいう風にならなかったハルヒの物語なのかなあ,と.意地の悪い見方かな,とは思う.