野中美里 『2WEEKS イカレタ愛』 (星海社FICTIONS)

2WEEKS イカレタ愛 (星海社FICTIONS)

2WEEKS イカレタ愛 (星海社FICTIONS)

「じゃあ幸せを感じるためには、自分よりも不幸な人と一緒にいればいいのか」
「嫌な解釈だね」
「もしくは他人を不幸にすることで、相対的に自分は幸せだと思えるとか」
「酷くない?」
「でも幸せに限りがあるなら、奪い合えばそうなるよ」
「人生って面白くないね」
「面白くはない」

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入学から約一ヶ月.ゴールデンウィーク最終日,高校生の上代雪介は,直感に導かれるように夜の高校を訪れる.そこでは,クラスメイトの黒戸サツキが,身長二メートル近いシマウマ男と戦っていた.
絶対に死なない少年と絶対に殺す少女とオカルト部と宇宙人とがあれやこれやする,イカレタ二週間の青春.第 3 回星海社FICTIONS新人賞受賞のデビュー作.なんというか,いかにも星海社の新人という感じの乾いた青春もの.血が流れ,肉がえぐれる場面が頻発するけれど,血のにおいがあまりしないところとか,「宇宙人」や「オカルト」が当たり前のようにそこにあるところとか,脈絡なく急転するストーリーとか.小さいなりにひとつの世界観(というよりルール)を構築することには成功している,と思うのだけど,それがどういうものかと訊かれると,よくわからない.