揚羽千景/原作・松田環 『大正探偵怪奇譚 第参巻 縁』 (徳間デュアル文庫)

大正探偵怪奇譚〈第3巻〉縁 (徳間デュアル文庫)

大正探偵怪奇譚〈第3巻〉縁 (徳間デュアル文庫)

「おかしなものだな」
「何がですか?」
小石川の言葉に、進ノ助は目を瞬かせた。
「君たちはときおり、人間よりも人間くさい」
「だが、人はときおり、化生よりも怖ろしい」

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大正 12 年.帝都東京の神社を狙った連続爆破事件を調べていた進ノ助は,弟の紅蜘蛛がその影にいることを知る.劇団しゅうくりー夢が上演した同名舞台の小説化・第参巻.サブタイトルの縁とは,兄弟の縁,親子の縁.鬼でありながらひとのなかで暮らす兄,鬼としてひとを殺し続ける弟.対照的な兄弟の数百年に渡る確執を,様々な面から哀しくも簡潔に表現している.無邪気さと狂気を矛盾なく同居させている紅蜘蛛のキャラクターは素晴らしいと思う.ひとと化生というもうひとつの対照も,関東大震災に襲われた帝都で,いかに人間が醜い振る舞いをするかという面から浮き彫りにしている.舞台セリフ調で説明調の口上が,世界観にうまいことハマっていて,読んで気持ちいい.ずっと積んでいたのをようやく読んだのですが,良かったです.