柴田科虎 『シアトロ惑星』 (講談社BOX)

シアトロ惑星 (講談社BOX)

シアトロ惑星 (講談社BOX)

新しいとびきりのおもちゃでも与えられた子供のような、さあ面白くなってまいりました! とでもいうような、共演の醍醐味を今まさに味わっているとでもいうような、その口ぶり。
「ぞくぞくする。生きてるって感じがする。このためにあたしは生きてる、舞台に立ってる──」
やばい薬でもやっているような、あるいは毒にでも侵されているような表情。──芝居という毒、演劇という病。

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貧乏学生の潮見康介は,小劇団「劇団不死隊」で劇作家を務めている.家を失った劇団員の美木沙里英(通称サリエロ)と同居している六畳風呂なしのアパートに,ある日押しかけてきたのはサリエロそっくりの宇宙人・サリエリ.奇妙な同居生活の日々,公演の準備を進める康介のもとに「宇宙刑事」を自称する三十代後半のおっさんがやってくる.
演劇,芝居にかける 20 歳の青春,宇宙人たくさん,ミステリもあるでよ.第 9 回 BOX-AiR新人賞受賞作.古代ローマを舞台に康介が書いた作中劇『毒』を,合間にはさみながら進行する.あらすじだけ見て『NieA_7』のような話かと思ったらだいぶん面倒くさかった.「性欲がない」と言うサリエロ,『MIX』と呼ばれる儀式にこだわるサリエリと康介とのほかに例を見ない(わりとマジで)三角関係は次第にギスギスと深刻さを増してゆく.ああこれぞ青春.地球の劇団員と,舞台芸術を愛するエピテュメス星人を対比させつつ,芝居と捕物も同時進行する後半は,複雑なことをやろうとしているためか正直かなり分かりにくかった.狙いは面白いので,しかるべきひとが読んで,評価を聞かせてくれると嬉しいな,と.とりあえず外箱のコピー「劇団×六畳風呂無し×宇宙人!?」を見て興味をもつようなら読んでみるといい.