アン・アギアレイ/幹遥子訳 『グリムスペース』 (ハヤカワ文庫SF)

グリムスペース (ハヤカワ文庫SF)

グリムスペース (ハヤカワ文庫SF)

「あんたはかなり年をとっている」マーチは冷たいとも言えない声で言う。あたしは今年三十三歳になる。「そのうえ五百回を越えるジャンプに成功して、コープのためにどのナビゲーターよりもたくさんの新たな標識を開拓したことが記録されている。あんたの成功の秘訣を知りたいと思っている人々がいるんだよ、ジャックスさん。俺はそういう人々の代理人だ」
「コープがあたしの脳みそを卵みたいにかち割ったり、あたしを監禁したりしたら、その秘訣とやらをあたしから手に入れることができなくなるってわけね」

Amazon CAPTCHA

異空間グリムスペースを利用した超高速航行を行うには,J遺伝子の持ち主であるジャンパーの存在が不可欠である.事故で相棒を失い,医療施設に監禁されていた一級ジャンパーのシランサ・ジャックスは,マーチと名乗る男に救出される.
宇宙を駆ける男と女.純粋な SF というより,SF 風味のラブロマンス,といったほうがたぶん正しい.いわゆるパラノーマル・ロマンス.グリムスペースや J 遺伝子などの SF ガジェットにこれといって説明がないのは個人的には気にならないし,テキストのテンポはそう悪くないのだけど,いい大人のヤキモチやらなんやらにうだうだとページを多くとっていて,ページ以上にとにかく長く感じる.この三分の二くらいですっきりまとめれば読みやすかった気がするし,ヒロインがあと 20 歳ほど若ければもっと真剣に読んでいた(日本の SF 読者にロリコンが多いのは定説).私が対象読者ではなかったということなんだろうなあ.