島津緒繰 『薄氷あられ、今日からアニメ部はじめました。』 (このライトノベルがすごい!文庫)

薄氷あられ、今日からアニメ部はじめました。 (このライトノベルがすごい! 文庫)

薄氷あられ、今日からアニメ部はじめました。 (このライトノベルがすごい! 文庫)

「え? お金の模写って絵描きなら当然やるべきことなのか?」
僕は不安になってきた。
「腕の良い絵描きなら当然通るべき道だよ。好きな絵を描けば上達も早まる。みんなお金は好きだからね」

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教室でエッチな絵を描いているところを女子に見られた火狩隆史.人生オワタかと思いきや,その女子は隆史にアニメを作ることを強要してくる.
第3回このライトノベルがすごい!大賞栗山千明賞受賞作.自分勝手で超強気な美少女に振り回されてアニメ部創設,部員は自称宇宙人だの変人揃い.というどこかで聞いたような設定の部活もの.しかし,読んでみると自主制作アニメだけはおろか,アニメ一般に関しても知識や愛着がまったく読み取れない.これは一体……と思いながらあとがきを読んだら,どうやらこの作品の主眼は年子の姉妹の本気のケンカにあるらしいと知り納得した.生徒会長でアニメ嫌い(漫画は好き)な姉と,そんな姉に反発してアニメを作ろうとする妹の姉妹ゲンカの話と思って読むと,なるほどすんなりはまる.タイトルは編集長の「鶴の一声」で決まったとのことだけど,「アニメ部」は単なるダシにしかなっていないのな.これは間違いなく編集(長)が悪い.姉妹の関係は発展させられる余地がかなり有りそうなのに,結果として,他にないくらい半端なものになってしまっている.