月村了衛 『機龍警察 未亡旅団』 (ハヤカワ・ミステリワールド)

「日本警察は少年兵を、未成年の戦争被害者と見なすのか、それともテロリストと見なすのかだ」

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「私達はこの国をチェチェンに変えてやるの」
淡々とアイシャが言った。まるでカレンダーに書き込まれた日々の格言でも朗読するように。
「この国だけじゃない、ロシアも、アメリカも、そうよ、世界中をチェチェンと同じにしてやるの。世界が私達にしたのと同じことをしてやるわ」

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チェチェン紛争で家族を失った女性だけで構成されたテロ組織『黒い未亡人』が日本に潜入した.特捜部は公安部と合同で捜査にあたる.一方で,特捜部の城木理事官は,実の兄であり与党副幹事長である宗方亮太郎に対して,ある疑念を抱く.この疑念は,政界と警察を揺るがすスキャンダルにつながっていた.
自爆テロも辞さない,女性だけのテロ組織が日本に潜入した目的とは.凄まじい.シリーズを追ってどんどん面白くなっておりたまらない.チェチェン紛争の現在進行形の犠牲者.少年兵たちの自爆テロ.徐々に輪郭が顕になっていく〈敵〉.「鬼子母神」に喩えられる女テロリストの「愛」と「憎しみ」.特捜部員たちとそれぞれ複雑に絡み合う過去も,説得力を持って迫ってくる.帯の文句ではないけれど,この物語がどのような展開を見せるのか,追いかけずにはいられない.読んでないひとは今からでも追いかけてみるといいのではないでしょうか.