カミ/高野優訳 『三銃士の息子』 (ハヤカワ・ミステリ)

短足と言われて、嘆息も洩らさず、言い返したりもしないで、唄いはじめるとは! ミロムも賢くなってきたようだな。これは長足の進歩だ。ついでに、長足になるとよいのだが……」

三銃士の息子 〔ハヤカワ・ミステリ1882〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) | カミ, 高野 優 |本 | 通販 | Amazon

かの三銃士ダルタニャン,アトス,ポルトスを父に持つ天下無双のヒーロー,その名も三銃士の息子.ゆけゆけ三銃士の息子.かつてのダルタニャンの従者だったプランシェの娘,ブランシュ=ミニョンヌを救い,悪に鉄槌をくだすのだ.
フランスのユーモア作家,カミによる『三銃士』パロディの冒険活劇.三銃士の息子って人名なのか! とか,「三銃士の息子」なのになんでひとりだけなのかの理由とか,導入でまずひっくり返る.空飛ぶクレープやら闘牛士キュウリモミータ(スペイン人)の人道的闘牛やら,いかしたドタバタギャグが楽しい.合間にたくさん挟まれるイラスト(カミ本人によるもの)が非常に良い味を出している.杉浦茂の絵柄で脳内再生された.あちこちにダジャレだらけのユーモラスな訳文も読んでて楽しい.ダジャレ好きならなおさらのこと.しかしこれ,ユーモアに満ち満ちた作品であることは否定しないのだけど,あらすじを詳細に書いていくと実はすごく陰惨で奇想に満ちた話になるのではないか,というか,ユーモア活劇の皮を被ったなにか,なのではないかな……? そもそも『三銃士』を読んでいないので,細かい機微が読み取れていない気もするが.ともあれ面白かったです.