- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/09/20
- メディア: 単行本
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「じゃあ、どういうことなの? なぜあなたはわたしの見た夢の内容を知っているの?」
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「だから、僕も君と共通の体験をしたからだよ」
「二人の夢が繋がっていたということ? どうしてそんなことが起きるのよ?」
「理由はわからない。それから、単に二人の夢が繋がっていたという訳ではないように思うよ」
「じゃあ、やっぱりわたしの気が変になっているの?」
「広い意味ではそうかもね」
大学院生の栗栖川亜理が,不思議の国に迷い込んだアリスの夢しか見ないようになってから長く経っていた.ある日,ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見た亜理.翌日大学へ行くと,ポスドクのひとりが墜落死していた.
夢の世界の「不思議の国」で次々と起こる殺人事件が,現実の死とリンクしてゆく,その真相は.やー,良かった.作中に登場するあらゆることを説明せずにいられない,ここ何年かの小林泰三の作風と,キチガイだらけで誰もまともなことを言わないし聞かない「不思議の国のアリス」の世界は素晴らしく相性が良いなあ.タガの外れた,というかそもそもタガの存在しない不思議の国の住人たちのキチガイじみた行動が,これ以上なくイキイキと描かれる.これは作者の集大成の作品なのではないかな.