扇智史 『最終戦争(アポカリプス)は二学期をもって終了しました -壱ノ刀・カグヤ-』 (一迅社文庫)

「もしも大沢さんに敵がいるのなら、助けになれたらいいとも思ったけど、そういうわけでもなさそうだし」
すまく言葉を選べるだろうか――佑は迷いながら、
「適当に、距離を取って、お互い穏便にやっていこう、って話。どう?」

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三学期の始業式.連城市を支配する組織,根元学会(アソシエーション)との最終決戦を勝利で終えた神木佑たちの前に,転校生の大沢七瀬が現れる.根元学会(アソシエーション)と戦うために派遣されてきた彼女だったが,とっくに戦いが終わったことを知り愕然とする.
異能バトルが終わった世界で日常を取り戻す物語.ライトノベル版ポストアポカリプス,というよりライトノベル版戦後処理というべきか.後日譚だけで一作を描き切っており,そういう意味では上級者向けの作品かもしれない.勝った者,負けた者,目的を失った者,トラウマを背負った者,理想を追い続ける者,という群像劇として読める.お約束な学園ものの延長線上で,こういう話が作れるのは,ジャンルの成熟あってこそではないか,と思ったけどそういう話は置いとこうか.地味であることは否定できないけど,落ち着いた良い話でした.