本田壱成 『優しいサヨナラの遺しかた とある終幕プランナーの業務記録』 (メディアワークス文庫)

「人の死を扱ってる職業には、色々ある。納棺師とか、葬儀屋とかね。どれも、人生の最後、エンディングを綺麗に演出してくれる仕事。でも、私たちのはちょっと違うの。言うなればエンディングの後、人生の終幕を演出する。だから、私たちは自分たちのことを、こう呼んでるって訳」
そこで、彼女は一拍を置いた。
「終幕プランナー――って」

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絵本作家の父を亡くした大学生の智永読は,火葬場で不思議な行動をとる少女を見かける.後日,父の利用していたホテルを訪れた読は,そこで火葬場の少女,小日向しるしと再会する.しるしは自分が依頼主の希望通りに人生の最期を演出する“終幕プランナー”であると言う.
『ネバー×エンド×ロール 〜巡る未来の記憶〜』(感想)の作者のデビュー第二作は「終幕プランナー」という職業をテーマにした連作短篇集.お仕事の内容は『星の舞台からみてる』(感想)に近いものがあるかな.プロローグとクライマックスをつなぐ伏線の回収はすごく綺麗に見せてくれる一方,「終幕プランナー」という「仕事」には穴が多い.日常の謎というかミステリ的な要素も濃いのだけど,その強引で理屈を通さない解決法には激しく首を傾げてしまう.そもそも根本的な部分に穴が多すぎて,短所が長所を完全に上回っている.まったく受け付けないひともいるのではないかな.「仕事」ではなく,例えば学園ものライトノベルとして書いていればここまでの違和感はなかった気がする.個人的には意欲を買いたいところだけど…….