デイヴィッド・マークソン/木原善彦訳 『これは小説ではない』 (水声社)

非直線的。不連続。コラージュ的。寄せ集め。
あまりにも自明なので、〈作者〉がそう言う必要さえない。


執拗なまでに相互参照的で、なぞめいた相互連結的な構文。
この点では、不注意な読者に対しては、それほど自明ではない。

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まったく物語がなく,時間の経過がなく,登場人物がひとりもいないにもかかわらず,なんらかの結末にたどり着く小説を書こうとする〈作者〉の試み.帯曰く“まったく物語のない小説。これは小説か,究極の反小説か?”.前後につながりがあるのかないのか,1行から3行くらいの断章が紙面を埋めている.内容は古今東西の有名人(ウィリアム・ブレイクサイ・ヤングアレクサンダー大王など数百人)のトリビアとか,様々な引用とか,〈作者〉の考えとか.250ページに渡って並べ立てられるそれらに加えて,50ページもある力の入った訳注がついている.緩やかな横のつながりはあるような気がするんだけど,確かに物語はまったくない,気がする.行間を(文字通りに)読む能力と,読者の教養が試されてる気がするなー.人物のチョイスとか,なぜその引用なのかとか,ニュアンスが自分の知識レベルではほとんど汲み取れないのよね.日本人作家のパスティーシュとかあったら読んでみたいな.