神西亜樹 『坂東蛍子、日常に飽き飽き』 (新潮文庫nex)

坂東蛍子、日常に飽き飽き (新潮文庫nex)

坂東蛍子、日常に飽き飽き (新潮文庫nex)

「そうだ、私も大事なことを忘れていた」
ロレーヌは思い出したように手を打って満に向き直った。
「本題は別にあったのだった」
「ん? 何? 言ってごらん?」
「どうやら蛍子は世界を滅ぼすらしい」

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とても美しい女子高生,坂東蛍子.タクシーに乗れば誘拐事件にぶつかり,街を歩けば多重ストーカーに狙われる.そんなこともさして気にせず,気ままに人生を謳歌する蛍子が,どうやら世界の命運を握ってしまったというからさあ大変.
第1回「新潮nex大賞」大賞受賞作.もともと小説家になろうに掲載した作品を元にした書き下ろしらしい.小説家になろうにこんな作品もあるのか,と驚いた.女子高生坂東蛍子を中心に,小学生,ヤクザ,猫,アンドロイド,CIA,宇宙人,閻魔大王その他奇人変人(?)が入り乱れドタバタジタバタ.まさに疾風怒濤の勢いである.洒落たテキストととぼけたキャラクターたちに,くるくると目まぐるしく変わっていく視点も楽しい.ネタが雑然とつめ込まれた感じはあって「雑な森見登美彦」という感想はすごくしっくりきました.スマートさはともかく密度と熱量は負けていない,と思う.楽しゅうございました.