吉野茉莉 『藤元杏はご機嫌ななめ ―彼女のための幽霊―』 (MF文庫J)

「杏さん。僕らは推理小説を読み進めているわけじゃないんだ。ただ現実に起こった話を妥当な方法で説明しているだけだ」

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東京から北海道へ入学した女子高生,藤元杏は,大好きなお兄ちゃんも所属していた執行部への入部を希望していた.クラスメイトのポチこと城山口優斗を巻きこんで執行部の門を叩いた杏は,入部の条件として学校で噂になっている幽霊を調べるよう依頼を受ける.一週間後の期限に向けて,杏とポチは学校の調査を開始する.
とあるふたりの幽霊探し.Amazonブクログ大賞で話題になったという「セルフパブリッシングNo1話題作」.なんかチクチクするやや苦い読み心地が,端的に言ってMF文庫Jっぽくないというか,東京創元社の青春ミステリっぽい.まあ,いたちのイラストがカラーもモノクロもすごく良いし,創元だったらイラストがこれほどなかったと思うのでこれでいいのだ.日常の謎で青春ミステリな前半はともかく,思わせぶりなことをにおわせながら一気に駆け抜ける後半は,荒っぽさがまさっているかなあ.続篇を前提としているのか,何が語られているのかわかりにくくなってしまっているのがちょっと惜しかった.なんだかんだと嫌いじゃないし,セルフパブリッシング版も読んでみようかな.
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