乾緑郎 『機巧のイヴ』 (新潮社)

機巧のイヴ

機巧のイヴ

作りながら、ふと久蔵は考えた。
子を孕んだ女の体には、魂が二つ同居している。
よくよく考えると、それは尋常ならざることだ。
では、女の子宮に宿った命は、いつどこからやってきたのであろうか。
魂が、どこからかやってきて宿るものであるなら、今、自分が手がけているこの赤児の機巧人形にも、不意に霊が宿ることがあるのではなかろうか。
そんなことを久蔵は思った。

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幕府精煉方手伝,釘宮久蔵によって作られた機巧人形(オートマタ)の伊武を中心に描くスチームパンクなSFミステリ.機巧に魂は宿るのか.人は形を愛するのか,命を愛するのか.60年に一度執り行われる遷宮や,巨大遊郭の十三層,コオロギを闘わせる闘蟋,「神代の神器」.江戸時代に似た架空の時代を,カラクリやら奇妙な風習やらで彩ったパンクな世界は,ボンクラ的な魅力たっぷり.装飾過剰・豪華絢爛な画が頭に浮かぶよ.『ニンジャスレイヤー』や『BEATLESS』(感想)が好きなボンクラはぜひ読んでみるといい.皆も後半の(ほぼ)主人公なのに不憫な甚内さんの扱いに涙を流すといい.素晴らしかったです.