森川智喜 『未来探偵アドのネジれた事件簿 タイムパラドクスイリ』 (新潮文庫nex)

未来探偵アドのネジれた事件簿: タイムパラドクスイリ (新潮文庫nex)

未来探偵アドのネジれた事件簿: タイムパラドクスイリ (新潮文庫nex)

「で、これからどうすべきか、ボクは考えた」
益井は聞く。
「どうすべきなの?」
「この事件を、宇宙から消滅させようと思う」

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益井探偵事務所には,23世紀からやってきた探偵が住み着いている.重力遮断服と携帯型時間移動装置の《タマテバコ》を手に,軽快に依頼を解決してゆく未来探偵,芽原アド.未来からやってきたタイムパトロール隊員,武村ロミも加えた3人は,未来犯罪者と対決することになる.
お手軽なタイムマシンでお手軽に事件を解決してゆく未来探偵登場.時間SFとして,それやったらアカン,みたいなことを当たり前にポンポンやるのがすごい楽しい.SFの好きなひとにはまず書けない(思いついたとしても書かない)SFミステリなんではなかろうか.どなたかが「理系のリの字も感じられないSFミステリ」という評を見たけど,まったくである.どことなく藤子・F・不二雄のSF短篇みたいな,とぼけているようでブラックな味わいもなきにしもあらず.それでいて「因果ポテンシャル」とか「因果相転移」とか,用語だけはかっこいい(それでいてたいした意味はない).畳みかけるラストも見事.面白かったです.