オキシタケヒコ 『筺底のエルピス ―絶滅前線―』 (ガガガ文庫)

憎むべき敵と、なんとしてでも守りたい大切なものが、同じ姿に重なっているのだ。喉元まで上がってきた言葉が、なかなか口へと出てこない。そもそも、内から這い出してこようとしているのがいかなる言葉なのかすら、叶にはわからなかった。
そんな躊躇を別の意味にとったのか、親友――朋之浦結が、頬を両手で挟んで嬉しげに目を見開いた。
無数の見えないプラグを頭蓋に挿入され、眩しい白い光に包まれたままで。
「わわ! もしかしてもしかして、にゅ、入部希望とかっ!?」

Amazon CAPTCHA

殺戮因果連鎖憑依体とは,古来より「鬼」や「悪魔」と呼ばれてきた存在.百刈圭と乾叶は,鬼を狩る組織である《門部》にそれぞれの過去を抱えつつ所属していた.鬼との戦いを続けていたふたりの前に,歴史上六体しか存在しなかった《白い鬼》が出現する.
時間を止める能力《停時フィールド》と改造眼球《天眼》を駆使し,絶滅を約束された戦いに挑み続ける異能バトル.創元SF短編賞受賞者だから,というわけではないだろうけど,非常にルール付けが明快で明確.強力な力を持ちながら,長所と短所がキッチリと定義された異能力同士の戦いは緊張感と説得力が同居している.殺せば殺すだけ強力になっていく鬼=殺戮因果連鎖憑依体を相手にした戦い方や,陰陽師に宇宙人まで登場するようなわりあいとんでもない話にも,一定の道筋が見えるのが良い.安心して話に没入して楽しめるというか.あと百合ね.良いものでした.