吉野茉莉 『藤元杏はご機嫌ななめ2 ―冷たい花火と優しい暗号―』 (MF文庫J)

「終わっちゃった」
彼女がぽつりと呟く。
それが花火のことなのか、夏祭りのことなのか、夏休み前の授業のことなのか、それともこの一ヶ月間のことなのか、僕には判別できないし、判別したいとも思わない。
それは僕の役割ではない気がしたし、それこそ僕の役割はもう終わっているとも思っていた。

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七夕の季節,短冊に書かれた暗号を見つけた杏,ポチ,くるみの執行部三人.暗号解読に頭を悩ますそんな折,杏の「お兄ちゃん」が杏のいる北海道にやって来ることになり.
学園青春ミステリの色がより濃くなった感のあるシリーズ二巻.暗号解読という日常の謎はオーソドックスなのだけど,生き生きした登場人物たちと,一人称の端々から垣間見える可愛らしいみずみずしさ,そしてにじみ出る青春の毒についつい読み進めてしまう.最終的に綺麗にまとまったとは言いがたいのだけど,実際に進行形で描かれる謎解きとは別に,なにやら大きな謎が被さっているような,そうでもないような? 回収されていない伏線もかなりあることだし(単にとっ散らかっているだけにも見えるが),どういう方向に向かっていくのか気になるところ.続きを期待しております.