からて 『殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る。』 (MF文庫J)

俺が本当にやりたいこと。
もう一度だけでいいから、あのマウンドに立つこと。そして、もう一度でいいから野球をやりたかった。
たとえ俺がこのまま生きていたとしても、これは叶わぬ願いだ。だから、この願いは言うべきじゃない。言ったところで意味は無い。
だから俺は天使の言葉に答えること無く、ただ小さく笑った。

殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る。 (MF文庫J) | からて, わんにゃんぷー |本 | 通販 | Amazon

空からいきなり落ちてきた天使ちゃんの胸を揉んでしまった高校生の黒木君.天界ではおっぱいを揉むこと=婚約をすることだと言い張る天使ちゃんは,黒木君を連れていくため手を変え品を変え殺そうとしはじめる.あっさり殺されてはたまらん黒木君は,果たして5日の期限の間に婚約破棄ができるのか.
主人公は事故で二度と野球ができなくなってしまい,学校での立ち位置さえ失った高校生.ヒロインは,人間には認識できない名前を持った天使.『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』(感想)以来約1年半ぶりの新刊.学校やクラスの描写はかなりうまい.やり直そうと空回りする勇人に笑ったり,冷えきったクラスの容赦ない空気にぞっとさせられたり,幼なじみ(同姓)との関係の変化だったり,どこから切っても印象にシーンが出てくる.反面で,ストーリーはいまいちまとまっていない.必然性というか,バックグラウンドが描ききれていない気がする.嫌いではないけどちょっと惜しい作品になっているかなあ.