森田季節 『不戦無敵の影殺師(ヴァージン・ナイフ)4』 (ガガガ文庫)

だが、生き方というのは楽しいから選ぶものではないのかもしれない。今日の飯をラーメンにするか、寿司にするか、カレーにするか、そんな自由な決め方はできなくて、ラーメンは最初から確定事項で味噌か醤油か塩か、せいぜいそのあたりの振り幅しかないのかもしれない。それならまだいいほうで、トッピングに味玉をつけるか、海苔をつけるかぐらいの自由度しかないのかもしれない。
ふざけてるかもしれないけど、実際そんなもんだよ。

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第2回ナイト・チャンピオンシップに敗退したことで元・最強の立場になった朱雀と小手毬.しかし知名度を得たことでそこそこの仕事には恵まれるようになっていた.だが,異能力者業界に「無能力」を名乗るアイドルユニットが人気を博すようになり,徐々に風向きが変わりつつあった.
「異能力制限法」下の異能力者たちの生き方を描いたシリーズの第四巻.異能力者たちと能力を持たない普通のひとたちの立ち位置の違いを異能力者の視点から描き,世界にもうひとつのレイヤーを追加しつつ,ストーリーを大きく動かしている.なるほど「新章突入」という感じ.両親との対話など,テンポが著しく悪い部分もあるけれど,世界観にさらに厚みが出て,強く現実に寄り添う物語になってきた.劣等感だったり,それぞれの幸福だったりとか,そういう話ね.どういう方向に舵を切るのかわからなくなった感はあるけれど,「ライトノベルとしてやれるところまでやります!」というあとがきを信じて,続きを楽しみにしております.