霧崎雀 『血潮の色に咲く花は 2』 (ガガガ文庫)

血潮の色に咲く花は2 (ガガガ文庫)

血潮の色に咲く花は2 (ガガガ文庫)

「この悪魔! 外道! あなた方には人の心がないの!?」
「なんだと!」
指差して非難された若い隊員が、母親に食ってかかる。
「あのなあ、俺たちが活動できなくなったら、誰がお前らを守るんだよ! タダ働きじゃやってられねえんだ。仕事をした分は金を払うのが常識だろ!?」
若い隊員は母親の顔の間近から、つばを飛ばして怒鳴りつける。
怒鳴る彼の口調に、下卑た響きがないのが印象的だった。金をたかっているという感覚は全く持っておらず、これは正当な対価の徴収であると、正義を確信して母親を非難しているのだ。

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人間に寄生して繁殖する妖花が存在する世界で,「宿主」狩りを生業とする青年ルッカと真紅の仮花の宿主である少女リディは,古都カテドラルに赴く.そこでは,本来個人主義であるはずの宿主たちが集団生活をしている「温室」があった.
宿主の思考と行動に強い影響を与える,ロイコクロリディウムのような寄生花が話のキーになるファンタジー第二巻.人間社会と,異質な思考を持った存在と,本来存在するはずのない集団との関係,それぞれの価値観.どこに視点を置くでもなく,ぼんやりした謎を謎にとどめたままのあいまいな語りにはじりじりと同時にわくわくさせられる.容赦のない暴力や死,拷問描写も物語を引き締める.ラストはいろんな意味でひどいと思うのだけど,そこまで含めてどえらい意欲作だと思うのよ.きちんと完結してくれたらすごい作品になると思う.