深見真 『シークレット・ハニー 2. 黄金銃を持つ少女』 (富士見ファンタジア文庫)

少し前に、ロボやら無人機やら戦闘ヘリに追いかけられて、どうしようもなくなって五十六も銃を撃ちまくった。撃ちたくはなかったのに、撃つしかなかった。村上春樹の『1Q84』を思い出す。昔のフィクションなら、銃が出てきたら必ず火を噴く。しかしドラマツルギーも時代に合わせて変容している。銃が出てきたからといって、撃たないまま終わってもそれはそれでいいはずなのだ。――っていうか、終わるといいなあ。本当に、心の底から発砲なしで終わってほしい。

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スーパーコンピューターによって世界の存亡に関わると予言された高校生,飯田五十六.アメリカのCIA,ロシアのSVR,中国国家安全部,その他各国の美少女エージェントに囲まれる五十六の日常は心が休まらない.さらに今度は,英国SISから,00ナンバーの孫娘である「黄金銃を持つ少女」が現れる.
船橋市を舞台にしたボンクラハーレム劇の第二巻.基本的にはのんきなハーレムものだけど,引き締めるべきところはしっかり引き締めるし,カッコよくて少しほろりとさせられる.映画や小説の引用もうまくてボンクラ男子の心をくすぐる.各章のタイトルはル・カレ,ケッチャムや「けいおん!」から,作中ではベスターやヴォネガット更伊俊介を引用,というね.それに「陰謀論を心から愛するプロの書店員」がこんなにもかっこいいなんて……! エンターテイメントの鑑のような作品と言ってもいいと思う.ちょう楽しかったです.