- 作者: さがら総,黒星 紅白
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/04/17
- メディア: 文庫
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山を越え海を渡り影に潜み、雨に打たれ風に吹かれ、くたびれ果てて目についた建物に立ち寄った。その真四角な建造物には、なんでもあった。部屋をいくつも持って、そのどれにもテーマがある。古城と同じぐらいの書物が並べられていて、古城によく似た風景の絵画が並べられていて、古城のベッドとそっくりなソファがあり、古城で姉さまの愛用していたのと同じ形のピアノがある。
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(中略)
その大型建築が『学校』と呼ばれるものだと理解したのは、いくらか後になってからのことである。
旧校舎には吸血鬼が住むという.噂を聞いて夜の旧校舎に出向いた常盤桃香は,屋上で美しき
タイトルはロンリーノスフェラトゥの略であって,変な意味ではないので気をつけよう.閉じた時系列の出来事を,女子高生作家だったり吸血鬼だったりロボットだったり正義の味方だったり,複数の視点から描いていく.主観と主観のぶつかり合いであるコミュニケーションって難しいよね,ということを,切々としたテキストと表現力で綴っており,大きなテーマは「変猫」や『クズと金貨のクオリディア』とほぼ同じな気がする.というか,何を書いても同じテーマに収束する作家だなあ,とは思う.もともと生き生きした一人称は一級の作家だと思うんだけど,章ごとに別々の人物で描くことで,主観がぶつかり合うこと,を立体的に描くことに成功していると思う.特に,引用部分のような『学校』の見方にははっとさせられたわ.