紙城境介 『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』 (ダッシュエックス文庫)

「混乱しているな」ルドヴィカは苦笑する。「これからわたしは推理劇の真似事をするつもりでいるが、それは終始この調子で、諸君の常識を破壊しながら進んでいくことになる。ついていけそうになければ帰っていただいて構わない。だが、残った者には懇切丁寧にお教えしよう――千年もの時間を跨ぐ、超歴史的な真実を」
観衆は沈黙し、その意を言葉なくして告げる。
それを認めると、ルドヴィカは純白の衣を翻して宣言した。
不敵に笑い、不遜な声音で――世界すべてに挑むかのように。
「――さあ家畜ども、人間になる時間だ」

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新米の聖騎士ウェルナー・バンフィールドは,「魔女狩り女伯」の異名を持つルドヴィカ・ルカントーニ伯爵の護衛を依頼される.千年前の伝承の調査のため,旧都プネリトを訪れた彼らは「密室」殺人に遭遇する.事件の謎に挑むルドヴィカたちだったが,その前にルドヴィカと旧知の異端審問官の少女が立ちはだかる.
第1回集英社ライトノベル新人賞《優秀賞》受賞作.『うみねこのなく頃に』とJDCシリーズに強い影響を受けたという京都市在住の新人作家,テーマは「超歴史的殺人事件」,というプロフィールから期待したものがすべて詰め込まれている.想像してた以上に新本格志向なミステリだったと思うの.密室のトリックは富士ミスでも見ない反則レベルのもの(SFではたまに見るかもしれない)だったり,幼なじみの魔法研究家と異端審問官の煽り合い,兄弟間の殴り合いがまさに竜騎士07っぽさ全開だったり,好き嫌いは分かれるかもしれないけど,この個人的にはすごく面白かった.風呂敷とハッタリを利かすなら最低限このくらい広げてくれないと楽しくないよね.