助供珠樹 『あの夏、最後に見た打ち上げ花火は』 (ガガガ文庫)

あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)

あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)

花火の光によってフラッシュバックのように脳内に描き出されるそれらのイメージは、紛れもなくこの夏に自分が見続けてきた現実の光景と同じものだ。
少女は確かにこの夏、自分とともにここにいた。
この場所に立って、同じ空気を吸って――そして恋をしたのだ。


全ては、一冊の小説を読んだあの日からだった。

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のどかな田舎町,松乃に暮らす中学2年生の寛樹は夏休みのある日,白い帽子と白いワンピースの少女と出会う.『あの夏、最後に見た打ち上げ花火』という小説のヒロインそっくりの少女,ノアに寛樹は心を惹かれてゆく.記憶を持たず,日本語もおぼつかないノアの記憶を取り戻そうと決意した寛樹は,小説の舞台であり,自分の生まれ育った松乃の町を奔走する.
第9回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作.謎の少女と中学生男子の,少し不思議なボーイミーツガール.夏休み,田舎,花火,白いワンピースの少女と,舞台装置はベタベタながら,しっかりとSFミステリになっている.作品タイトルと(ほぼ)同じタイトルの作中作がキーになっているところ,自分だけが知っている少女(少年)という謎,ひまわり(ラベンダー)の使われ方など,法条遙『リライト』(感想)に通じるものが不思議と多く,裏『リライト』みたいな作品になっている(とても意識しているようには思えないのだけど).他にも,作中作『あの夏、最後に見た打ち上げ花火』は,33歳で夭逝したSF作家,伊東の唯一の非SF作品にして遺作であるとか,ひとによってフックする部分がいろいろあるのではないかな.イラストも気合が入っていて,あるシーンを読んでからモノクロの扉絵を見返したらぞわわっときてしまった.とても良かったです.