陸凡鳥 『魔法使いの召使い』 (ガガガ文庫)

魔法使いの召使い (ガガガ文庫)

魔法使いの召使い (ガガガ文庫)

「おやまあ! あなたを見ていると、たまに失敗するのも、そう悪くはないんじゃないかと思いますよ。そうすれば、自分が賢いだなんて勘違いせずにすみますからね! まったくもってそうですとも!」
これは素晴らしい意見だった。実直な家政婦たる彼女は、いつだって道理の通ったことしか言わないのである。

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両親をなくし,天涯孤独の身となってしまった少女,ビアンカ.働き口を探していたビアンカは,不思議な手紙に導かれ,魔法使い,エルヴィンの住む家を訪れる.家政婦のメーネとともに住み込みで働くことになったビアンカだったが,生来のドジがたたって失敗続き.
魔法使いの召使いになった少女がやらかしたたくさんのことと,成し遂げた大きなこと.文体・セリフ・ストーリーなど,すべてにおいて翻訳児童文学調をなぞっている.徹底した試みが面白い.金原瑞人訳の新作だと言われて渡されたら(もともと数えるほどしか読んでいないので),そのまま信じてしまうかもしれない.児童文学版のニンジャスレイヤー的な何かなのだろうか,と用心しながら読んでいったのだけど,そういうのではない様子.児童向けとして出していたら評価されてたと思うのに,どうしてガガガ文庫から出してしまったのか.まあ逆にこのレーベルでなければ自分は読まなかったかもしれないし,すべての伏線をまとめあげていくクライマックスはお見事.良かったと思う.それにしても,デビュー作から読んでるけど,いろいろな話が書けるわりにどっか器用貧乏な印象が抜けない作家だよなあ.