渡来ななみ 『想い出の色、あなたに残します』 (メディアワークス文庫)

わたしが死んだら、わたしのたましいを抽出してください。
たとえ、きれいな色に染まることができなくても。

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空に還る人間の「たましい」を,ガラス瓶の中に抽出する.すると,そのたましいは人生の想い出の色に染まる.さまざまな色のたましいを保存している高瀬命髄学研究所には,さまざまな事情を抱えた人々がやってくる.
「たましいに色をつける話」を書きたかったという作者が作り出したのは,「命髄学」というちょっとトンデモのにおいのする架空の科学.テーマがテーマだけに,死と閉塞のにおいが強く,後ろ向きの主人公の性格もあって正直気が滅入る.ロマンチックというには仕掛けが強引だし,ホラーじみた変な狂気も感じるし.率直に言って面白いかというと微妙ではあるけれど,作者の執念みたいなものをそれぞれのキャラクターの言動から感じる.そこに共感できるかどうか,なのかな.感想が難しいな.