宮澤伊織 『不本意ながらも魔法使い(ソーサラー)』 (一迅社文庫)

不本意ながらも魔法使い (一迅社文庫)

不本意ながらも魔法使い (一迅社文庫)

「魔法とは何か? 自分の思うとおりに世界をねじ曲げる業だ! できない、やりたくないと抵抗する世界を、ねじ伏せ、屈服させ、言うことを聞かせるのだ! そのための魔法体系を、儂はおまえの中にまるごとぶち込んだ。儂の生涯かけて集めた魔法すべてをだ!」
「じゃあ、なんでそれ使えないんだよ!?」
「おまえの脳みそが足りないからだ!」
「ああ!?」

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高校生の天道戒は,人間族唯一の老魔法使いによってとつぜん異世界に召喚されてしまった.老魔法使いは新しい〈器〉であるという戒に魔法の力だけを受け継がせて,自分は魔物によってとっとと殺されてしまう.不本意ながらも魔法使いになってしまった戒は,老魔法使いの下僕だったふたりの少女とともに街を目指すことになるが.
とつぜん最強の魔法使いにされてしまった男子高校生が,異世界の人間と七人の魔王の戦いに巻き込まれてゆく.作者が作者だけあって,この手の世界を描くのはお手の物.しっかりとしたハイファンタジーを,うまく換骨奪胎してライトノベルに落としこんでいる.コメディとかハーレムとかを描きながら,異世界に対する畏怖というか敬意というか,そういうのを忘れないし,自然にひとつながりのストーリーになっているのはさすが.面白かったです.パッケージ的に埋もれやすいのが惜しいなあ.今なら創元SF短編賞受賞作家が書いたファンタジーだぞ,とアピールしやすいと思うので,ぜひ押していっていただきたい.