オキシタケヒコ 『筺底のエルピス 2 ―夏の終わり―』 (ガガガ文庫)

「祈りましょう」
祈るしかなかった。残された命があとわずかしか続かないことを、阿黍も、そして自分も、よくわかっていたからだ。阿黍が力なく笑みを浮かべ、尋ねてくる。
「神サマ自身が……何に祈るっていうんですかい」
「もちろん、人に、ですよ」

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古来より「鬼」や「悪魔」と呼ばれてきた殺戮因果連鎖憑依体.《門部》は最悪の「鬼」といわれる白鬼の憑依者となった少女,結を保護する.門部の討伐員である圭たちとの表面上穏やかな一時の日々は,他の討伐組織から送られてきたメッセージカードによって大きく転換する.
時間を停止する停時フィールドという異能力に,「鬼」こと殺戮因果連鎖憑依体,1400年を生きる三体の異星知性体,三つの鬼狩りの組織,1万年後の滅亡が決定づけられた人類.てんこ盛りのアイデアに,今回は犯人探しの密室ミステリだったり,陰謀論だったりがさらに盛られ,後半に入ってからはすさまじい密度と展開に圧倒される.停時フィールドの使い方にはいちいち目からうろこが落ちるわ.それにしても,この一冊で一気に過去千数百年,この先一万年に渡る,全地球規模の,まったく希望の見えない物語になってきたぞ.刷り部数がものすごく少ないという情報もあって心配もあるけれど,続きを……なんとかして続きを…….