岡本タクヤ 『異世界修学旅行』 (ガガガ文庫)

異世界修学旅行 (ガガガ文庫)

異世界修学旅行 (ガガガ文庫)

まったく異なる世界の文化を引っ提げてやってきた異世界人。
インカ帝国とスペイン人は、不幸な出会いだったといえるだろう。少なくともインカの人々にとっては。世界と世界が、文化と文化がぶつかったとき、そこには必ず摩擦が起きる。
でも、俺たちの教科書にだって、いくつかの幸福な出会いもまた記されている。
では、俺たちは?
とりあえず、王女に菓子を与えることくらいはできるけれども。

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浩介たちの緑ヶ丘高校二年一組は,修学旅行に向かう途中,何やら中世ヨーロッパ風の異世界に飛ばされてしまう.王女プリシラ客人神(まろうど)として受け入れられた一行.魔王が死んだばかりで平和と戦勝景気に沸く世界で,暇を持て余した王女と浩介たちは他のはぐれたクラスメイトたちを探しに,異世界での「修学旅行」に向かうこととする.
飛んだ先の異世界は平和でした,という異世界転生もの(転生ではないが).こんな緊張感のない転生ものもそうそうないのではないかな.ふたつの世界が出会ったら何が起こるのか,という意味では,昨日の「そんな世界は壊してしまえ」(感想)と共通したテーマを扱っているのだけど,雰囲気も緊張感も違いすぎる.誰も死なないし,何もこじれない.でもまあ作者が作者だけあってわかってやってるのよな.さすがに平和すぎたか,前半は少し引き伸ばし気味でネタがくどく見えるのはちょっともったいなかったかな.「中世ヨーロッパ風の世界にジャガイモやトマトがあるのはおかしいでしょうが!」とキレるハイファンタジーマニアと,それをあっさりと躱す王女の理屈が痛快かつタイムリーで良かった.