旭蓑雄 『MOE――召喚(め)しませ!おとめなえいたんご』 (電撃文庫)

「この世界において、プレイヤーであるエイタさまが手に入れられるものは、全て“アルファベット文字”によって構成されております。アルファベットの二十六文字が、この世界をつくっている物質だと思っていただければ結構です」

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2050年.英単語を美少女に擬人化したブラウザゲーム『えいたんご☆ますたあ』のVRMMORPG版として『えいたんご☆ますたあ@Vあーる』がリリースされていた.高校受験がようやく終わり,『えいたんご☆ますたあ@Vあーる』を自由に遊べる身になったエイタは,僕の嫁ことexplode(設定年齢11歳)を入手すべく,同じ志を持つ仲間たちとクエストに挑むのであった.
萌え擬人化ものかと思ったら暗号解読ミステリでした,という.これはかなりの怪作.あらすじの「英単語美少女化」と「MMO小説」から,ヴィクトリアンな世界を舞台にしたホームズもので暗号ものとか,想像しろというのは無理が過ぎる.ヴィクトリア風のエリアを舞台にしただけかと思ったら,ちゃんと聖書とかシェイクスピアとかドイルとかを引用しながら,図面も使って暗号を書いていくのよ.「英語で出来た世界」もきちんと伏線になっていて,各種引用に絡めつつ綺麗にわかりやすく収束していくのが見事.あとがきを信じる限りでは,シェイクスピアの墓碑銘を暗号として解読しようとする人々に影響を受けたというから,暗号をメインに置きたかったのかな.完全に願望ですが,続編があるなら『煙滅』や『残像に口紅を』みたいな話にすると面白そう.
ということで面白かったです.しかし,このカバーやあらすじから内容を想像するのはどう考えても無理だと思うのよね.どうか届くべきひとに届きますように.