るーすぼーい 『白蝶記 ―どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか―』 (ダッシュエックス文庫)

小倉のいまの言葉は決して忘れまいと心に決めた。施設を頼ったおれが馬鹿だった。半端に楯突いていた。そうか、半端だったか。心が冥く沈む。黒くて危うい衝動と計画が必要だ。それは、陽咲や母親に抱いている輝きとは対局にあるものだ。

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ある宗教団体が運営する,北海道の人里離れた児童養護施設.旭,樹,陽咲の三人は,指導職員である小倉の気まぐれな悪意と暴力に晒されながらも,協力しあって静かに日々を過ごしていた.小倉によって樹が懲罰小屋送りとなった日,自分ときょうだいを守るため,旭はある決意をする.
あかべぇそふとつぅ所属ライターの小説デビュー作となるピカレスクロマンにして倒叙ミステリ.舞台から想像できる範囲を大きく外れることなく,倒叙としてもオーソドックスなんだと思うけど,できる範囲で丁寧に,変化球なしで描いている.冬の北海道の寒さだったり,担当職員の暴力だったり,宗教団体の村の不気味な雰囲気だったり,そういうひとつひとつがひしと身に迫る.一冊かけたプロローグだとも思うけど,これは良いものだと思うし先が気になる.期待しております.