屋久ユウキ 『弱キャラ友崎くん Lv.1』 (ガガガ文庫)

「でもね。本当に大事なのはそこじゃない。いい? 『人生』のゲームオーバーにはね。他のすべてのゲームとは、まったく違う特徴が一つだけ、あるのよ。……それがなにかわかる?」
(中略)
「『人生』は、戦闘に勝ったときじゃなくてね、負けたときにこそ、経験値が入るのよ」

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人生はクソゲーだ.生まれつきの強キャラが絶対有利な不公平なゲーム.あらゆるゲームを頑張り続け,頂点に立ち続けてきた俺が言うんだから間違いない.このありふれた定型句は真実なのだ.しかし,俺と同じくらいゲームを極めたあるプレイヤーは,人生は神ゲーだと言い切る.そいつは俺に,この人生(ゲーム)のルールを教えてあげる,なんてことを言う.
ゲームだけが取り柄の弱キャラ高校生が,人生というゲームをいかにして攻略するか.第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作の「人生攻略論」.導入部でどうなんだろうと思ったらとても良かった.テーマがテーマなのに,コミュ障とかスクールカーストみたいな扱いやすい言葉を使わず,「努力する主人公」を地道に描いていて,とても気持ち良い.……まあ,ゲーム用語という別の使いやすい言葉を使ってるんだけど,作者独特のわかりやすさを出すのに一役買っているのでセーフ.ゲームが好きなら人生も好きになれる.ゲームも人生も,攻略法を知っているだけじゃダメで,努力と実践こそが必要だという,シンプルなメッセージを,さわやかなストーリーで読ませてくれる.「人生は,負けたときにこそ経験値が入る」というのは至言だと思う.良い作品でした.