深沢仁 『英国幻視の少年たち2 ミッドサマー・イヴ』 (ポプラ文庫ピュアフル)

妖精の国へ行くときに、持っていくもの。
サフラン、新鮮なミルク、焼きたてのパン。
機械類、特に時計は携帯しないこと。服装はアースカラーが望ましい。香水など、人工的で不自然な香りは身につけないように。靴は革靴を。
宝石は、本物ならばつけていってもよいが、その場合は盗まれることを覚悟するべし。

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お前らイギリス人はだからだめなんだよ。シェイクスピアの読みすぎだ。そんな悲恋、時代遅れなだけで面白くもなんともない」

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カイが生活能力ゼロのランスと同居を始めてから約半年.夏至が近づいてきたある日,ウィッツバリーで子供が妖精に連れ去られる事件が起こる.子供を連れ戻すため,カイはランスに付き添って妖精の国に行くよう,英国特別幻想取締報告局から命じられる.
夏至前夜(ミッドサマー・イヴ)は,妖精の国とこの世界がもっとも近づく日であり,ウィッツバリーのどこかに妖精の国への道が繋がるという.現代英国のファンタジー第二巻のテーマは取り替え児(チェンジリング).「寂しさも優しさも、ほとんどおなじ」という作中の思想が,テキストと物語の両方に反映されているのな.一巻(感想)の時点では冷静な印象が強かったテキストも,今回はどっかしらぶっきらぼうさと温かさ(とイギリスらしい皮肉)が感じられるものになっている.
意思表示が下手くそで,嘘はつかないけど本当のことも言わないという,ふたりの共通点と距離感がえっらいかわいらしいのよ.どっちも男なんだけどさ.性格の悪いイギリス人たちや,無邪気な妖精たちもいちいちほんとかわいい.終盤に描かれる,妖精の国の不思議な緊張感も素晴らしい.英国の竜宮城,という例えには膝を打った.続きが出ることもすでに決まっているようで,本当におめでたい.現代ファンタジーや,男同士の友情()が好きなら,男女関係なく読んでみるといいと思うよ.