渡航(Speakeasy) 『どうでもいい 世界なんて ―クオリディア・コード―』 (ガガガ文庫)

朝の時報代わりに、砲弾が飛び交っていた。
グッドモーニング、チバ。
東京湾に架けられた巨大な橋へと至るレールの上を装甲列車が走っていく。鉄輪は悲鳴のように軋みを上げ、旋回する砲塔が無骨な音を立てていた。
きっと、海の向こうでは戦争が始まるのだ。
否。
始まるという表現は正しくない。
この戦争は終わったことがない。

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未知の敵〈アンノウン〉によって崩壊し,侵攻を受け続けている世界.防衛都市・千葉に住む千種霞は,戦闘科から出向となった生産科のブラックな職場で,パワハラ上司のもと日々勤労に勤しんでいた.
TVアニメ『クオリディア・コード』の前日譚・千葉編前編.東京編の「そんな世界は壊してしまえ」,神奈川編の「いつか世界を救うために」とはだいぶ毛色が違うかな.戦争が日常となり,人口の一割しかいない戦闘科が,のこり九割の非戦闘員の上に立つ世界,というか社会をいかにして,どのように変えるか,という.異能力は最低限しか描かれない.破滅はしないけどカタルシスもなく,楽しくない日常がだらだら続いていく息苦しさが底にあるかな.民主的な手続きや,政治的な根回しを簡単に捻り潰すことができる暴力という力,という事実をシンプルにはっきり書いていて驚いた.ライトノベルのオブラートと,気取ったテキストで包んでいるようで,それほど包む気はなさそう.まあ,「人類の敵は仕事」って書いてるもんな.後編を読まないとわからんな,と思いました.