鳩見すた 『続 この大陸で、フィジカは悪い薬師だった』 (電撃文庫)

「あたしはいつかこんな日がくると思ってたよ。エルフを森で焼いた日から、エイル教会はずっと敵を作って殺しての繰り返しだからね。魔女を滅ぼしたら次は誰を敵にするんだい? 肌の色や住んでるところで切り分けるのさ! そうして最後に残った男女が、血塗れの楽園で『最初の人間』になるんだよ!」

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異端の《悪い薬師》フィジカは,教会の定める「害獣」を救って旅を続ける.そんなフィジカに付き従う角守のアッシュだったが,旅をする二人の前に,遠くにいるはずのアッシュの妹が現れる.
ワーウルフワイバーン,ケルピー.ファンタジーにおける魔物の生態を,短編連作ミステリのスタイルで解き明かしていく『この大陸で、フィジカは悪い薬師だった』(感想)の完結編.ワーウルフにしかなし得ない密室殺人だとか,幻獣・害獣の持つ「信仰」だとか,ファンタジー世界での弱者にあたる人間の多産戦略だとか,描かれるテーマと一話完結スタイルとの相性がとても良い.キレがあってすんなり楽しめる.ハッピーエンドも良かったのだけど,結末に向けて,とう見ても尺が足りてない.おかげで後半はものすごい性急.ご都合主義と超展開にも見えかねないというか.もっとゆっくり,のんびり読みたかったし,それができる作品のはずなのに,もったいないなあ,と.ともあれ良い作品でした.