屋久ユウキ 『弱キャラ友崎くん Lv.2』 (ガガガ文庫)

「『正しいことを言っているのに提案がとおらないのはおかしい!』って怒っていても、なんの意味もないってこと。自分は正しいという確信にあぐらをかいて、そのままやり方を変えずにいたら、『提案をとおせない人』として止まったままで、なにも意味がないってこと」
「えーっと?」
「そのままだと、言っていることが本当に正しいのだとしても、一生その提案をとおすことができず、なにも残せないままに死んでいく。とおらないなら、こちらが変わるべき」

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「動機がわからない人と競いあうのは、とてもきついことだと思うんです。ゴールが、見えないから」

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人生はクソゲーである.日南葵のスパルタ指導のもと,友崎くんはそんなクソゲーの攻略に日々勤しんでいた.季節は夏,生徒会選挙の時期がやってきた.当然のように会長に立候補する日南に対して,友崎は同じく立候補したクラスメイトのみみみをサポートすることにする.
人生というゲームにおけるイベント,生徒会選挙を攻略する方法,あるいは一切の妥協のない努力について描いたシリーズ第二巻.一巻(感想)から「努力」の物語だったのだけど,今回はさらに努力を突き詰めた物語になっている.「圧倒的努力量による制圧」であらゆるトップに立ち続ける日南.「努力の限界」にぶちあたり,日南に追いつけないみみみ.ライトノベルの主人公は努力しない云々,みたいな話が最近も出たけど,報われるとは限らない「努力」を突き詰めて描くとエンターテイメントから逸脱して辛くなるからやらないだけなのではないかな.ということを読みながら思った.
人生攻略法としての「空気」を操作する方法のレクチャーと,その実践の場として描かれる生徒会選挙も楽しい.地道な描写から,作者の真摯な態度と頭の良さが見えるのよな.非常に好感が持てる.そういう意味では,誰からも理解できない理由で努力する日南や,誰も悪くないまますれ違う人間関係も,もやもやも抱きつつ,安心して読める.変な表現だけどね.非常に良い作品,良い青春だと思います.