枯野瑛 『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #04』 (スニーカー文庫)

物語の中の勇者たちは、きらびやかに飾り立てられた戦場で、輝きにあふれた活躍を繰り広げる。邪悪な強敵を打倒して、きれいなお姫様と結ばれる。男の子に生まれたなら誰でも、いや女の子に生まれても一部は、彼らの生きざまに憧れる。
その憧れは、大切なものだと思う。
そして、憧れは憧れのまま、現実につかんでしまってはいけないものだとも思う。ヴィレム自身、純真なる少年の例に漏れず、幼いころには勇者に憧れ、志した。そして、その夢を実際にかなえた直後に、気づいたのだ。「なんかちがう」と。

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戦いの中でクトリは命を落とし,ヴィレムとネフレンは何者かの夢の中にいた.500年前に滅んだ世界を再現した夢の中で,ヴィレムは死に別れた娘アルマリアや,かつての仲間ナヴルテルと再会する.
目の前に広がるのは500年前に過ぎ去ったはずの終末の光景,そして世界を滅ぼす〈月に嘆く最初の獣〉(シャントル)が生まれる.クライマックス直前となる四巻.終わることが確定した懐かしくも悲しい「夢」が,長い時を隔てて現実へと繋がっていく,という.ここまで時間を掛けて慎重に,地道に積み重ねて描いてきた終末の描写がひどく効いてくる.創造神である星神(ヴィジトルス)の由来と世界の成り立ちには膝を打った.というか,ラストがものすごいことになっていて,ほんと落ち着かない.ここで終わるの!? みたいな.とっとと五巻も読まないといかんですね.