大澤めぐみ 『おにぎりスタッバー』 (スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

「一緒に死ぬ気?」
「馬鹿言わないで。一緒に生きるのよ」
一年先も、二年先も、そのさきずっと先の将来も、サワメグと一緒に生きていくんだから。

ベージュ系の地味な女子高生,アズこと中萱梓は,援助交際だか売春だかをやっているらしいと噂され,クラスで浮いていた.実際のところ,まったくの嘘でもないのだけど,それほど気にせずなんとなく生きていたアズだったが,街なかでパンクスに殺されそうになったあたりから妙な事件に巻き込まれ.
カクヨムで掲載された「世界を巻き込む危険で切実な恋愛小説」の書籍化.これは2010年代のハルヒや! みたいな雑な感想が真っ先に浮かんだ.目標もなくふわふわと生きていた女子高生が,友だちだったり男の子だったり親だったり,色んなひととの出会いで成長していく,という大筋は青春小説の王道よね.周りの人達も本人もちょっと変わった出自(魔法少女とか勇者(?)とか)があるだけで.
思っていることをすべて吐き出すような,密度の濃くてウザい一人称の語りから,ひとりの女の子の像が浮き上がってくる.テキストの密度に導入から圧倒されてうわーっとなる.改行のほとんどないテキストというのも最近では珍しいかもしれない.アズの成長というか視野が広がっていくのに連れてなのか,だんだんとテキストの表現する幅が広がっていくのも楽しい.本当,良い青春小説で恋愛小説だと思います.