飛浩隆 『自生の夢』 (河出書房新社)

自生の夢

自生の夢

どんな形容もおっつかない。
塩ではない。霜でもない。
星だ。
本物の星は、美しくなんかない
星ぼしは人間にまったく関心なく、ただ超然と、荒涼とかがやくだけだ。
だからこそいつまでも見ていたいんだ。

星窓 remixed version

個体にはたいした情報処理応力があるわけではない。それはいい。ただ、じぶんの〈さみしさ〉を自覚してくれればいい。数億の、数百億の、数兆の個体がそれぞれに感じる孤独、分節の悲しみを内面でしずかに奏でていてもらえばいい。

はるかな響き

「海の指」「星窓 remixed version」「#銀の匙「曠野にて」「自生の夢」「野生の詩藻」「はるかな響き」.七編を収録した10年ぶりの短編集.SFとしてのアイデアと結びついた「文字」や「言葉」へのこだわりがすごい.言葉で世界が作られる,という言葉が何重もの意味を持つことを実感するというか.表題作から始まる,アリス・ウォンを中心とした一連の物語に特に強く実感する.本当に良い作品集だと思います.